きままにくろねこ

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「コートールド美術館展」:遠目と近目で受ける印象の違いに注目して見よう!

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2019年秋頃から始まった『コートールド美術館展 魅惑の印象派』。最初の開催地である東京都美術館での展示を終え、今年1月より愛知県美術館へとやってきました。

 

コートールド美術館?なにそれ!

ルーブル美術館プラド美術館は聞いたことあるけど…?

 

コートールド美術館の名前をあまり聞かないのも無理がないかもしれません。

でもでもでも!!今回のこの美術展、絶対に見逃してはいけませんよ…!!

 

実は、コートールド美術館は滅多に所蔵品を外部に貸し出さないミュージアムなんです。そんな美術館の作品が今回、まさかの日本で!60点もの数を観ることができてしまいます。

 

えっじゃあ見に行こうかな!?

でも絵画の楽しみ方ってよく分からないよ;;

 

いえいえ、絵画は知識や確かな審美眼を持って鑑賞するのも素敵ですが、あまり詳しくなくても大丈夫です。むしろ、詳しくないからこそ純粋な気持ちで鑑賞できることだってありますからっ

 

でも、ぱーっと流し目で見て「わー綺麗だったねーすごいねー」で終わるのもちょいともったいない気もする。

 

この記事では、

①サミュエル・コートールドと『コートールド美術館』について

②『印象派』について

③予備知識ナシでも楽しめる作品の見方

を紹介します。

 

専門的な言葉を避けて言い換えるなど、読みやすくなるよう心がけました。

 

 

『コートールド美術館展 魅惑の印象派』

東京  2019年9月10日~2019年12月15日

名古屋 2020年1月3日~2020年3月15日

神戸  2020年3月28日~2020年6月21日

サミュエル・コートールド、『コートールド美術館』について

 

『コートールド美術館(Courtauld Gallery)』は1932年に開館したイギリス・ロンドンにある美術館です。

実業家でアートコレクターでもあった、サミュエル・コートールド(Samuel・Courtauld)のコレクションと援助を中心に設立されました。

当時のイギリスにはまだ美術専門の研究機関がありませんでしたので、その設立にあたり、コートールドが自身のコレクションの寄贈や提供で全面的に支援しました。

そのため、ギャラリーには最大の協力者だったコートールドの名がつけられたそうですよ。

 

 

『印象派』について

 

 『印象派』が栄え始めたのは19世紀頃、ちょうど産業革命のまっただ中にあった激動の時代でした。

クロード・モネの作品『印象・日の出』にちなみ、『印象派』と呼ばれるようになりましたが、もともとは好意的な意味ではなくむしろ皮肉的なニュアンスだったそうです。

 

印象主義の彼らは積極的に芸術運動を起こしていましたが、芸術家やパトロンにもなかなか評価されず、展示会を開いても客は来ず、絵も売れず…と苦しい日々が続いたとのことです。

実際に1860年代に開催されたサロンでは、印象派の作品は軒並み落選し、そのあまりの落選数の多さにアーティストや支持者を動揺させたともいわれています。

そんな苦労が続いていた『印象派』も次第に上流階級・中流階級層の目にとまるようになり、それから1880年代頃には突出した存在になるまでに評価されました。

 

 

印象派の絵画の特徴はいくつかありますが、直感的に見て分かりやすいもので言うと、

①筆づかいがハッキリとわかる大胆な塗り

②斬新で不思議な構図取り

③日常的な風景やモティーフを取り入れること、普遍的であること

④正確で豊かな光の表現

などが挙げられます。

 

ちなみに印象派がこうも批判され嘲笑された理由の一つには、彼らの筆使いの荒さが挙げられます。それまでのアカデミック美術では全く反対の特徴を大事にされていたので、彼らにとっては印象派の荒々しい筆使いは「雑で稚拙な未完成作品」と捉えられてしまったのです。

 

ちょいとコチラの絵を見てください。

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《Tête d'Etude l'Oiseau》William Adolphe Bouguereau

この少女の絵を描いたのはウィリアム・ブグローという画家。アカデミック美術に代表される画家です。神話や少女、天使を題材に描くことが多く、モティーフごとの質感にこだわった写真のような筆使い・色使いが特徴的です。

このように神秘的な絵画の時代から突然ゴッホの「ひまわり」のような作品が現れ始めたのですから、そりゃ「なんじゃこいつらは!」ってなるのも必然だったのかもしれませんね…

 

 

遠目で1回、近づいて1回、最後に遠目でもう一回見て!

 

②で印象派といわれる作品の特徴についてさらっと紹介しました。

 

では、その特徴をどうすればめいっぱい鑑賞できるのでしょうか?

 

ずばり、

遠目で1回、近づいてもう1回、最後にもっかい遠くから1回!!

 計3回、じっくりと、様々な距離感で眺めてみてください。

そうすると、「あっ」と不思議な感覚に包まれるはず。

 

例えばこちら、ゴッホ作の『花咲く桃の木々』。

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Vincent Willem van Gogh《花咲く桃の木々》Courtauld Gallery

 

パキッとした鮮やかな色で描かれた日常的な風景画、でも、どこかファンタジックな印象を受ける作品です。

遠くから見ると、彩度が高い風景写真のような1枚ですよね。現代人っぽくいうと、ちょいと強めの加工をした写真でしょうか!

撮った写真を加工する時、「あれ?ここにこんな変な色入ってたっけ?」ってなるような、予想外の色が出てくることがありますが、なんだかそんなようなイメージです。

 

何はともあれ、遠くから全体をぼんやりと見てみると、ゴッホの色使いと色彩分割の凄さを純粋に感じ取ることができると思います。

 

さて、風景画として遠目で楽しんだら次はぐっと近づいて凝視してみましょう!

遠くからではあまり意識して見られなかった「ゴッホの筆跡」が見えてきます。

 

『印象派』の作品は筆の形がはっきりと分かるような大胆で明快な筆使いが特徴です。

ゴッホは特に、版画や点描のような趣のある塗り方なのがわかります。

 

この絵の空をじっくりと見てみてください。

遠目から見ると、青色の中に太陽の光を表現した暖色が見て取れます。

「わかる!空ってこんな色するよね!」とうんうん頷きたくなるくらい自然な表現なのですが、それも近づいてみると点描のようにポツポツポツポツ…と色を置いているのがわかります。

 

近くで見ると一筆ごとに色彩が分割されていて、どこか「妙ちくりん」な感じがあるのに遠くから見ると「こんな風景見たことあるかも!」と思わせる説得力と豊かな表現が詰まっています。

 

 

目を凝らして見ると、絵に隠された「不自然」に気がつく! 

 

次に人物画も見てみましょう。

 

先述のゴッホの絵にも通ずる特徴なのですが、印象派の作品にはもうひとつ驚きの技法が用いられています!

それは「斬新な構図のアングル」です。

 

普段私たちが見ている風景はもちろん、お

 

 

今までアカデミック美術などで描かれていた絵画とは異なるポイントに重きが置かれています。

 

セザンヌが描いた『カード遊びをする人々』を見てみましょう。

 

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Paul Cézanne《カード遊びをする人々》Courtauld Gallery

 

オレンジがかった優しい光の表現も相まってシックな1枚で、どこか真面目そうな雰囲気が漂います。

 

そんなことを考えながら、ジッと目を凝らしてみると、この絵に隠されている「不自然さ」がじわじわと見えてきませんか?

 

机に注目してみてください。

両方の脚の長さが違うかのように不自然に水平面が歪んでいます。

また、椅子だけでなく左の黒衣の人物の胴体にも着目してみてください。右の人にくらべて不自然に長すぎるではありませんか!

他にも、左の人の肩が不自然に下方に描かれていたり、カード遊びをしているはずなのにそれぞれの人物が自分だけの世界に没頭しているかのような孤独感を感じたりもします。

 

構図やモチーフの形をあえて少し崩して描く方法は、セザンヌに限らずほかの印象派作品でもよく見られます。

モティーフの正確さよりも、絵画から感じる印象や、込められたストーリーを如何にロマンティックに伝えられるか、が大事にされているようです。

 

 

最後にもう一作品だけご紹介します。

 

印象派作品の中でも特に最高傑作だと、私が勝手に思っているのコチラの作品。

マネの『フォリー・ベルジェールのバー』です。

 

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Édouard Manet《フォリー・ベルジェールのバー》Courtauld Gallery

印象派の作品に見られる特徴のひとつ『斬新な構図』がこの作品にも見受けられます。

 

画面の中心でどこか憂いを帯びた表情をするバーメイドの、人物としての美しさはもちろん必見。衣装のレースの描き込みも息を呑む精巧さなんですが…

 

注目すべきは後ろの「鏡像」なのです!

バーメイドの後ろ姿が普通の鏡像としてはありえない位置に映っていることや、カウンターに置かれているビンの数や位置が異なっていることなどさまざまな「不自然」が隠れています。

 

この作品のメインは間違いなく中心のバーメイドです。

意図的に遠近感を歪ませたり、鏡の中のものの輪郭をぼやかして描いたりすることで、おのずと真ん中のバーメイドに視線が集まります。

 

また、鏡の中でのみ姿を現す紳士、この存在があるからこそ、私たちはこの1枚の中に濃密なストーリーを想像することができるのです。

 

「印象派」の作風が現れ、世間に認められるまでの間にはさまざまなエピソードがありました。作風や背景について少しだけ知ってから見に行くと、より一層美術館も楽しめるのではないでしょうか?

 

ちなみに、「ゴッホは生前絵が1枚しか売れなかった」というのは、印象派の歴史を知ると余計とそれっぽいのですが、ちょいと誤りがあるそうですよ。

実はゴッホが画家として活動したのは彼が亡くなる10年前からなのだそう。画家がある程度知名度や理解を得るには長い時間がかかるので、単にゴッホの絵の魅力を理解してくれる人が現れなかった…というわけでもなさそうです。

 

おわりに

 

コートールド美術館展、ほんと〜に素晴らしかったです。

1枚1枚の情報量が多いのはもちろん、展示数も60点とかなり多いので、足腰が痛くなっちゃうくらい長時間楽しめます。

 

会場にはイチオシ絵画の解説パネルが複数設置されていたり、作品ごとに少しずつエピソードも紹介されていたりと手厚い特別展です。コートールド美術館の作品はなかなか外部に貸し出されないので、今回この規模の展示は後にも先にも前例がないかもしれないよ!

 

美術通な人にはもちろん、「なんかレア展示らしいから見に行きたいけど良さがわかるだろうか…」「友人や家族に誘われたけどあんまりよく分からんのだよな……」という方もぜひ!

 

なにも、展示されている全ての作品をじっくりと見つめなければいけない、なんてそんな事はありません。

遠目で見て、気になると思った作品だけじっくり見る。なんて楽しみ方もアリなんですよ♪

 

それでは良い文芸ライフを〜

 

ちなみに、余力があればぜひ物販コーナーへも立ち寄ってみてください!展示作品のポストカードやフランス産・イギリス産の紅茶やお菓子、各画家の本、展示作品をまとめた画集などなど、すてきなものが沢山あります。

 

ポストカードはコレクション用にも、親戚や友人に送るハガキにも使えるのでオススメです♪

私は展示品をまとめた画集と紅茶を買いました^^

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自然に不自然 ビバ印象絵画!

 

※美術館へ行った後はしっかりと手洗いうがいをしてくださいね。人が沢山集まる上に密室です!

また、入場口付近にはアルコール消毒が置いてありましたので、ぜひご活用ください!元気にいきましょ~!!

 

 

あわせてよみたい

 〇『印象派』が栄えた頃(19世紀)に出版されたゴシック小説はいかがでしょうか?

 

〇私の推しモナカの話をしよう