きままにくろねこ

文学・芸術・グルメを愛する20代女子ののんびりライフ

〈日本版「ウエストサイドストーリー」Season1〉観劇レポート・考察

f:id:kurone-cocoa:20200110213607j:image

観劇日:2020年1月8日マチネ

 

プリンシパルキャスト

宮野真守さん、笹本玲奈さん、樋口麻美さん、小野田龍之介さん、中河内雅貴さん

 

宮野さん笹本さん中河内さんは映像含め何かしらで見たことのあるキャストさんばかりで信頼感がすごい。ワクワクとはやる気持ちを抑えていざIHIステージアラウンド東京へ。

 

 

ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」Season1

あらすじ

舞台は、1950年代後半のニューヨーク、マンハッタンのウエストサイド。セントラルパークを挟んで、イーストサイドが高級住宅街で、ウエストサイドには多くの移民が住んでいた時代の物語。
この頃のニューヨークは、世界中から多くの移民が夢と富を求めて集まってきた時代だった。彼らはそれぞれギャング集団を作り、お互いに敵対し合う。しかし、ポーランド系移民のトニーと、プエルトリコ系移民のマリアは偶然出会い、激しい恋に落ちてしまう。禁断の愛は多くの人を巻き込み、悲劇の連鎖を生む…。

シェイクスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」に着想を得た作品。偏見、暴力の世界で生き抜いていくために恋にもがく作品であると、この作品の脚本家、アーサー・ローレンツは言う。

公演内容:WEST SIDE STORY Season1|TBSテレビ:IHI STAGE AROUND TOKYOより引用

 

 

「ブロードウェイ・ミュージカルといえば?」と聞けばおそらく結構な人が「ウエスト・サイド・ストーリー」と答えるであろう名作中の名作。

 

今回は日本版キャストで上演するとのことで楽しみにしておりました。

「近代」「ギャング」と聞くとディカプリオ主演の映画と東宝版のロミジュリミュージカルをほんのりと思い出します。

シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」自体がアーサー・ブルックの「ロミウスとジュリエットの悲しい物語」に着想を得たとされますし、こうやって少しずつ改変されて物語が紡がれていくのはとても興味深い。

 

大学時代に所属した「イギリス文学研究」ゼミに思いを馳せながら観劇してきました♪

 

以下感想です。

ところどころ「ロミジュリ」と比較しながら綴っていきます。

演出やストーリーについてのネタバレがありますので、未観劇の方はご注意ください。

 

★★

2019年のミュージカル「ロミオ&ジュリエット」観劇レポートもあります。

〈ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」〉観劇レポート・2019キャスト編 - きままにくろねこ

 

初ブロードウェイ発ミュージカル

 いつもはヨーロッパミュージカルしか見ないので、毛色の違いに驚きました。

とにかくダンスが多い。そして意外と歌は少なかった気がする。WSSの作品柄ということも有るのでしょうが、ジャズダンス風の踊りが沢山あってすごくテンションが上がりました。

ジャズダンスが大好き!あれがジャズダンスなのかはわからんが・・・

 

どうしても比較対象がリーヴァイ&クンツェのヨーロッパミュージカルだけになってしまうので、比較例として不十分ではあるのですが、

ヨーロッパミュージカルは結構歌が多くてセリフ量も多い。

メロディに乗せた会話シーンも多い印象ですが、ブロードウェイミュージカルはまた少し違いました。

歌うための曲というよりBGMに合わせて口ずさむ…というような?うまく言えないけど。

歌のための曲です!!て感じが少なくて、BGMとしての曲、歌としての曲の境界が結構曖昧だなぁというのが感想。

ラッパの音?がすごいオシャレでした。

 

全体感想&考察:「ロミジュリ」の汚い部分にフォーカスした作品

 WSSとロミジュリのキャラクター照らし合わせ

ウェストサイドストーリー(略:WSS)が赤字、ロミジュリが青字です。

トニーロミオ

マリア:ジュリエット

アニータ乳母

ベルナルドティボルト

リフマーキューシオ

チノパリス

ドックロレンス修道士

シュランク警部大公

 

 

ストーリー・演出

 「ロミオとジュリエット」はロミオとジュリエットの悲恋の部分に重きを置いて語られることも多いのですが、実際にはかなり汚いというか・・・社会背景や人間関係の闇が深い世界。

モンタギューとキャピュレットという2つの家が昔から争い続けていて、その抗争の中で未来ある若者たちが命を落とす。

だが、ロミジュリにおいては両家の抗争を超えた愛を持つロミオとジュリエットが橋となり両者が和解する、いわば”願い"のようなものもかけらています。

 

ロミオとジュリエットがどのように出会い恋に落ち、何を想い愛し、何を憎み何の犠牲となったか・・・という、ふたりの世界をメインに書いています。

そんなロミジュリの結末はジュリエットは亡くなったと聞いたロミオが眠るジュリエットの側で毒薬を飲む、そして仮死から目覚めたジュリエットが嘆き悲しみ後を追って命を絶つ。

この2人の場合、社会の闇や無益な争いが2人を世界から葬ったとも言えます。しかし、現世で経験した恨みや苦しみ、争いなどが何もなく、現世よりも心配のない世界で2人は共に結ばれたという逆説的なハッピーエンドを迎えます。

そして後に両家は尊い犠牲となったロミオ、ジュリエットを嘆くように手を取り合い和解しました。

 

一方ウエストサイドストーリーは、

ジュリエット相当のキャラクター・マリア、ロミオ相当のキャラクター・トニー、

その他にもマーキューシオやティボルトに相当するキャラクターがおり、ストーリー進行や各キャラクターが退場するタイミングなどは同じですが、ラストの結末が大幅に異なります。

 

ロミオとジュリエット

ジュリエットが自殺したと聞かされたロミオがキャピュレット家の墓までやってくる。

そしてジュリエットの目の前で毒薬を仰ぎ息絶える。

ロミオが息絶えたあとジュリエットが目を覚まし、ロミオの死を嘆く。

その後ロミオの持っていた短剣で後を追う。

※原作だとキャピュレット家の墓に侵入するところでパリスを倒したはず

 

ウエスト・サイド・ストーリー

マリアは殺されたと聞かされたトニーが街を奔走し叫び回る。

住宅街を抜けた頃にマリアと偶然再会し、言葉を交わす。

安堵するトニー、間髪いれずチノに撃たれる。

目の前で恋人を撃たれたマリア、嘆き悲しむ。

その後マリアは拳銃を手に取り、周囲の人物に銃口を向ける。

「弾は残ってる?全員殺せるかしら?私も殺せるかしら?」とのように言ってみせ、幕が閉じる。

 

・・・こう見ると本当に違う・・・!!興味深い。

観劇前に予習すれば良かったとやや後悔です・・・

 

話を戻します。

上記の結末の違いからわかるように、

WSSにおいては両家(ギャング)の和解はなく、ただただ深い沈黙が繰り返されただけ。

 不条理、あまりにも不条理な物語。ロミジュリのような「死が2人をわかつとも」という救済なんてものはなく、ただただリアルな現実がリアルに描かれていた。

WSS、NOTロマンス、BUTリアリズム。

 

ここら辺が決定的な違いかなぁと思いました。

 

 

最後のマリアの言葉、「私たちがトニーを殺した」と零すシーンからも分かるよう、荒廃した社会の中で行き場のない若者たちが奪い奪われるという不条理さを感じさせるシーンが多々ありました。

 

ロミジュリと違い各キャラクターの死がアッサリと語られるため、ただただ時の流れがそうしたんだ、とでも言いたげな他責的な開き直りさえ感じました。

歪みすぎてそれが当たり前の日常だということが脚本自体で語られてる。情が無い。報いも無い。

 

R&Jはとにかくタイトルよろしくロミオとジュリエットに焦点を描かれているのに対して、やはりこちらは「ウエストサイドストーリー」なのでマリアとトニーの恋愛模様もかなり軽めに書かれている印象です。

 

この「ウエストサイドストーリー」というのは、誰かの恋や誰かの死、という話ではなく「アメリカの不条理社会のワンシーン、若者編」みたいな感じ。

ほんとうに不条理で理不尽なんですよね、

 

 

最後のシーンで憎しみを知ったマリアが仲間でも誰彼構わずに銃口を向けるシーン。

その場面での登場人物の沈黙はトニーの死に対する罪悪感などではなく、マリアの発狂ぶりをみてただただ何も言えないといった呆然とした何かを感じました。

なんだろう、「僕たち何も悪くありません、」「僕たち何もしりません」みたいな異質さ。

きっと明日も、何も無かったかのようにいつもと同じ日々が続くだろうし、マリアはこのあとどのように生きていくのだろうといった寂しい未来を予感させる結末でした。

 

ここは多分かなり感じ方に個人差ありそうですが、私はそういう人間の汚いところを一番感じ取りました。

 

 

原作とミュージカル「ロミジュリ」、原作と「WSS」

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」と「ウエストサイドストーリー」両者の原作戯曲改変の仕方もそれぞれ面白いと思ったので覚え書き。

 

※ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」は以下R&Jと表記します。

 

実はロミジュリ原作はかなりドギツイ下ネタ話が多いのです。

本当にここに書くのは憚られるのですが、「誰が上手いこと言えと」と思わず突っ込みたくなる無駄に言い回しが秀逸な猥談が本当にめちゃくちゃ多いです。

 

しかしミュージカル、

R&Jはロミオとジュリエットの純愛ロマン仕立てになっており、殆どのそういう猥談シーンがカットされています。寧ろ確か1回もなかったはず・・・

 

一方WSSは原作と同じくらい下品なネタが多かったなあという印象。

マリアの頼みでドラッグストアまで来たアニータをからかうシーン、あのシーンで男が服を脱ぎ捨てたのは本当にびっくりしましたね。

ここまでやるか、と。

中途半端に荒くれの青年たちの生活を描かないというところも人気の理由の1つかもしれません。

 

 

プリンシパルキャスト感想

f:id:kurone-cocoa:20200110213641j:image

トニー役 宮野真守さん

 

歌が上手いスタイルが良い

マリアを前にした時などの優しい素顔や、

決闘を止めようと必死になる姿、

そしてマリアが亡くなったと聞かされ発狂した姿など…表情、声、身振り手振りを全力で活かした感情表現に感動しました。

声優活動でも大人気の宮野さん、滑舌や声の質、声の表情がどれも最高。

昔好きだったアニメで、好きなキャラクターの声を宮野さんが演じておられたこともあり、素敵な宮野さんの演技を生で見て聴けたことが嬉しかったです。

青っぽい紳士服似合うなぁ…かっこよかった

 

マリア役 笹本玲奈さん

マリー・アントワネットでタイトルロールを演じた笹本玲奈さん!

すっかりMAでトリコになってしまい、玲奈さんがまた見れるとあってドキドキMAXでした。

マリー・アントワネット役では華やかな王妃の一面と、力強い母親の一面を力いっぱいの歌声や声で表現されておりすごくかっこよかったのですが、マリアは華やかで無垢なまだ若い少女。声を高く可愛くして話していて、最初は「え!?玲奈さん!?」とびっくりしました。

恋に悶えるいじらしい姿やドレスが気に入らないとアニータに言う姿などのあまりの可愛さにきゅんきゅんしました。

 

 

アニータ役 樋口麻美さん

 パワフルな歌声とダンスに圧倒されました。

樋口さんな実は今回初めて知った役者さんなのですが、パワフルなのにのびのびとした歌声が素敵でした。声も凛とした美しがあって、どこかソニンちゃんを彷彿とさせる歌声…好きすぎる。

アニータの少しキツめの舞台メイクがすごく似合っていてオペラグラス越しにドキドキしました。

あめりかさいこー!みたいな曲(未履修状態だったので色々覚えてません)ではアンサンブルの方達との息のぴったりあったダンスが美しかったです。ドレスのスカート部分を振り回す振り付けかっこいいな…

またいつか樋口さんのミュージカル見てみたいと思いました。

 

 

ベルナルド役 中河内雅貴さん

今回笹本玲奈さんと同じくらい生で見るのを楽しみにしていた中河内さん。

古川雄大さんも通っていたというダンススクールの先輩ということで、ジャズダンスを楽しみにしていました。

サイコ〜〜〜〜!!!すぎて終始ドキドキ。

ダンスパーティのシーン、とても振り付けが細かくて早いのにスラリと軽やかにステップを踏んでいたのが本当に本当にかっこよかったです。

ウエストサイドストーリーのダンス自体がジャズダンスの雰囲気強めなので(多分)、もう中河内さんの強みにピッタリすぎる役どころでした。

口角を上げてニヤついた表情を見せる瞬間がたまりません。

 

 

リフ役 小野田龍之介さん

 小野田さんも樋口麻美さんと同じく完全初見のキャストさんです。

ガタイが良くて、どっしりと構えている感じがかっこよかったです。

演技には深い考察を重ねたようなじんわりとひろがる説得力を感じ、セリフ一つ一つをとってもグッときました。

以前トニー役を演じたこともある方のようなので、別キャラクターを演じた故の考察の深さや、別のキャラクターの感情がわかる故の包容力があったのかもしれません。

とても素敵なリフでした!!

 

 

 360°アラウンドビューの可能性

 さすがブロードウェイミュージカル、セットが沢山あってどれも豪華な作りでした。

バイクに乗る演出もそれステージ上で出来るんだと感動。

アラウンドビューでは人物の動きや時間の流れに合わせて座席が動きます。

たとえばマリアが撃たれたと聞かされ、嘆き叫びながら街を走り回るトニー。

そのあいだトニーに合わせて座席も動きます。

そして街を出て閑静な場所へ行き着きマリアと再会… そのあいだ景色は目まぐるしく変わるのですが、そういった時間の流れを言葉やセリフでなく、客席の移動で表現出来るのは新しい可能性なのでは?と思いました。

 

帝国劇場で上演された「マリー・アントワネット」では、王妃の裁判シーンから処刑シーンへの移り変わりは、マルグリットという少女の語りによって表現されます。

マルグリットのとあるセリフをきっかけに時間の経過や場所の移動、裁判所から処刑台へ・・・と、いつの間にかシーンがかわります。

ううん説明がとっても難しいのですが、漫画を読んでいるときに次のページに開いた瞬間「そして5年後・・・」みたいな・・・「!!?いきなり場面転換か!!??」て驚くような・・・なんかそんな感覚に近いなあ・・・

そういう叙述トリック的な演出もすごく好きで、「マリー・アントワネット」の中ではお気に入りのシーンですらあるのですがやはりそれとは全く違うベクトルの感動がありました。

 

 まとめ:「とあるアメリカの不条理世界」

 ウエスト・サイド・ストーリーの世界が伝えたいことは教養や何かの教訓だなんてことはなく、ただただ当時の社会背景を如実に表しステージ上で再現、蘇らせるための話なのかな、なんて思いました。

でも、ただ単に私が何の教訓も感じられなかっただけかもしれません。

 

「過去に学べるか」とかそういうメッセージではななかった。私にとっては…

 

「抗争や暴力が横行する社会はダメだと思いました」とか、

「平和な世界になってほしいです」とか、

「トニーとマリアが死別して悲しいです」とかそういう感想を思い起こさせる気力さえ奪ってしまう強烈な不条理物語でした。

 

幕が降りる時、無音のカーテンコールなど、「喪にふくす」ような沈黙ではなく、

「死人に口なし」と言ったような異常に冷たい空気を感じました。

マリアが無言で「ねえ、あなたはどうおもう?」とだけ語りかけて来るけど私の答えを聞こうとなんて一切していなくて、そのままさらりと消えてしまうような……

 

ただただ、「これが20世紀のアメリカだ」という事実だけを伝えたストーリーでした。

 

そんな冷たさが最高にクセになる。サイコーなミュージカルです。

観劇できてよかった!もう今年のマイベストオブミュージカル堂々受賞。

 

 

※全ては個人の感想です。

 

ウエスト・サイド・ストーリーseason2、season3、公演決定しています。

 

見に行きたいな…

公式サイトはコチラ。

 

WEST SIDE STORY Season2|TBSテレビ:IHI STAGE AROUND TOKYO

 

WEST SIDE STORY Season3|TBSテレビ:IHI STAGE AROUND TOKYO

 

樋口さんがソニンちゃんの雰囲気があって素敵だなぁと話していたら本当にseason3のアニータ役にソニンちゃん抜擢らしくてびっくらこいた・・・見に行かねば・・・

 

あわせてどうぞ♪

〇2020年再演決定のエリザベート(2019)レポート記事です

www.kimama-kuroneko.com

www.kimama-kuroneko.com